遊藝館 鉾田道場

空手で「自分との約束」を守る心と身体を鍛える
井川雅博さん
「道に志し、徳に拠り、仁に依り、芸に遊ぶ」の理念のもと、空手を通して心・技・体のバランスを育てる場です。 子どもから大人まで、年齢や体力に関係なく取り組める稽古環境を整え、礼儀や自己管理力、そして「自分との約束を守る力」を育みます。
また地域に根ざした存在として、鉾田の街に元気と笑顔を届けています。
URL:ホームページMap:暮らす
- 空手
- 青少年育成
- 精神鍛錬
Q.まず、空手との出会いについて教えてください。どのようなきっかけで始められたのでしょうか?
もともとスポーツは色々やっていたので、身体を動かすこと自体は好きでした。
その中で空手って、単に戦うとか強くなるということ以上に、自分を鍛えるためのものだと思ったんです。
「精神的に強くなりたい」という気持ちで空手をやりたいという思いもあって、寸止め空手では物足りなくて実際に叩いたり蹴ったりするような、実戦的な空手に惹かれていましたね。
そんなとき、たまたま床屋に行ったらチラシを見つけて「これだ」と思いました。格闘技が盛り上がっていた時期でもあり、空手のかっこよさに惹かれて始めたのがきっかけです。
Q.道場を開こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
その頃は本部の道場に通っていた一道場生だったんですが、あるとき館長から「鉾田で道場を開いてみないか」と声をかけてもらったんです。
自分自身、空手に対する考え方や指導への思いが強くありましたし、そういう場を与えてもらえるならぜひやってみたいと思って、2014年に道場を開設しました。


Q.指導する立場として、どのような思いで取り組まれていますか?
自分が道場で教える中で1番大切にしているのは、「自分との約束を守ること」です。
今日はこれをやると決めたら、疲れていてもやる。気分に流されず、自分で決めたことに責任を持つ。そういう積み重ねが、精神的な強さを育てると思っています。
技術だけではなく、そういった心の部分を一緒に育てていきたいと思って指導しています。
Q.指導方針の中で、印象的な子どもたちの成長の瞬間はありますか?
たくさんありますよ。例えば、最初は跳び箱が一段も飛べなかった子が三段を飛べるようになったり、なかなか勝てなかった大会でトロフィーを取ったり。
そういった小さな成功体験を積んでいく中で、表情が変わってくるんです。
泣いてばかりいた子が泣かなくなったり、稽古の最後に笑顔で帰る姿を見ると、「ちゃんと成長してるな」と実感しますね。

Q.これまでの11年間で、地域とのつながりにはどんな変化がありましたか?
少しずつですが、地域の皆さんとも関わりができてきました。地元のお祭りで演武を頼まれたり、鉾田のメロンフェスティバルに出演したりと、声をかけていただけることが増えました。
こちらからなにかを仕掛けるというよりは、地域の方から呼んでもらえるのが嬉しいですし、そういう形で少しでも地域に貢献できていたらと思っています。
Q.地域の子どもたちにとって、この道場がどういう存在になってほしいと考えていますか?
「ここに来たら自分が変われる場所」だと思ってほしいですね。初めて来た子は緊張して泣いてしまうこともありますが、それくらい真剣な空気がある場所です。
神棚や太鼓が置いてある空間に圧倒される子も多いんですが、その中で少しずつ慣れて、自信をつけていく。そういう経験ができる場として、道場が存在していけたら嬉しいです。

Q.稽古・指導の中で特に工夫されていることがあれば教えてください。
うちでは空手だけでなく、跳び箱や鬼ごっこ、キッズデザイン賞を受賞したYUYU体操なども取り入れています。
現代の子どもたちは身体をうまく使えないことが多いので、基礎体力や運動感覚を高めることも大事なんです。
もちろん空手の稽古は厳しい部分もありますが、最後にちょっとした遊びを入れて笑顔で終わるようにしている。そういったメリハリがあるから、子どもたちも続けていけるんだと思います。
Q.最近は「おにぎり道場」という飲食の取り組みも始められたそうですね。
はい。実は50歳になったタイミングで、これからは自分が本当にやりたいことにチャレンジしていこうと決めたんです。
空手の指導と並行してサラリーマンも続けてきましたが、それをやめて、今年の4月からおにぎり道場をスタートしました。
元々おにぎり屋さんだった場所を、ご縁があって厨房ごと引き継がせてもらったんです。道場の親御さんが手伝ってくれて、おにぎりや唐揚げ、揚げパンなどを提供しています。
稽古前後に子どもたちが買っていく姿を見ると、これもひとつの地域とのつながりだなと感じます。
Q.最後に、これから空手を始めようとしているお子さんや、保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
空手は、ただ強くなるためのものではありません。自分との約束を守る力、最後までやり抜く力を育てる場所です。
そしてそれは子ども1人ではなく、親御さんと一緒に育てていくものだと思っています。
お子さんの頑張る姿をしっかり見て、声をかけて、一緒に成長を見届けてほしい。道場はそのきっかけをつくる場所です。
まずは一歩、見に来ていただけたら嬉しいです。
井川雅博さん、本日は素晴らしいお話をありがとうございました!