丸や

神栖の畑から、まっすぐな野菜を
海老原さん
昭和5年の創業から、三代にわたり野菜一筋で営んできました。信念は、正直に商売をすること。どんな時代も、どんな商品も、真っすぐな言葉と目で見た確かさを大切にしてきました。
現在では約200名の生産者と連携し、自社でも71棟のハウスを持って、農業の現場から未来をつくる挑戦を続けています。廃棄ロスの削減、加工食品やサプリの開発といった新しい挑戦にも取り組みながら、次の世代へ確かな価値を届けていきます。
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- 神栖ピーマン
- 正直に
- 自社栽培
Q.「丸や」さんはどのようなきっかけで商売を始められたのですか?
うちの祖父は栃木県の生まれで、当時は兄弟も多かったこともあり、10代で東京に出て働き始めたと聞いています。
東京の野菜問屋のようなところで修行をして、その後、昭和5年に「丸や商店」として創業しました。
最初は切り三つ葉を中心に扱っていたそうです。汽車で北海道まで野菜を出荷していた時代で、当時は東京で100円の野菜が北海道では500円で売れたという話もあったくらいです。
戦争が始まってからは東京での商売が難しくなり、神栖に土地を買って一時的に移り住みましたが、終戦後もそのまま神栖に根を下ろすことになりました。
Q.神栖の地で再び商いを始める上で、ご家族にはどんな苦労があったのでしょうか?
終戦後はインフレでお金の価値が大きく下がり、お米を買うのもやっとという時代だったそうです。
東京に戻ってもすぐに商売を再開できる状況ではなかったため、神栖にそのまま暮らし続けることになりました。
その中で父は、農家さんから野菜を仕入れ、自転車にリアカーをつけて周辺地域に売りに行くなど、地道に商売を広げていきました。


Q.ピーマンの生産者をまとめるようになったのはお父様でしたね。
はい。父は昭和30年代に地域のピーマン農家をまとめる出荷組合を立ち上げました。
鹿島港の開発に伴う移転の際も、商売をしていることが土地の優先取得条件だったため、思い切って八百屋に転身し、地域農業と深く関わってきました。
今では茨城・千葉の約200人の生産者と連携し、地域の農業を支える役割を担っています。
Q.地域の生産者の方々との関係性で特に大事にしていることはなんでしょうか?
1番大切にしているのは「正直」であることです。
私たちはただ高く売るのではなく、生産者がどうすれば収入を上げられるかまで考えています。そのために自社でハウス栽培を行い、実験的に栽培方法を試し、得られた知見を農家の方々に共有しています。
今ではハウスも71棟あり、自社でも栽培する立場になっています。

Q.「適地適作」ではどのような判断基準や工夫をされているのでしょうか?
栽培技術があっても、やはり土地の名前が持つ力は大きいですね。神栖のピーマン、銚子のキャベツのように地域名が信頼につながっているんです。
たとえ同じ品種を作っていても、あまり知られていない地域では評価されにくいという現実があります。
だからこそ土地に合った作物を選び「神栖のピーマン」としてしっかり市場に届けられるよう、品質を安定させていくことを大事にしています。
Q.若手の生産者や後継者が不足しているという課題にはどのように取り組んでいますか?
高齢化は大きな課題です。うちでは県の農林事務所と連携し、勉強会を通じて技術や病害虫対策などを共有しています。
また自社農場も今後10町歩(9,9174㎡)まで拡大する目標を掲げていて、若い世代にも安心して入ってきてもらえるような体制を整えています。

Q.自社栽培の拡大の中で「マルヤエコファーム」という法人を立ち上げられた経緯はどういったものですか?
もともとは農家のためのモデルハウスをつくるつもりでした。
しかし高齢で辞める農家の方から「借りてくれ」と声がかかることが多くて、条件も良かったことから借りるうちにだんだん規模が拡大していったんです。
今では本格的な農業経営となり、販路だけでなく生産現場も自社で担う体制を取っています。
Q.事業拡大の構想はありますか?
現在、加工品の開発にも取り組んでいます。
今はまず業務用向けの冷凍ピーマンの製造からスタートする予定です。将来的には、自宅を改装して小規模な加工工場を作る構想もあるんです。
最終的には、廃棄される野菜を活かしてサプリや化粧品といった商品を展開することも視野に入れています。農家の収入を上げる手段として、ロスを減らす取り組みでもあります。
Q.そうした構想の原点にはどんな思いがあるのでしょうか?
現在、加工品の開発にも取り組んでいます。
30代の頃に体調を崩し漢方に助けられたことがあって、そこから自然由来の力に興味を持ちました。
当時は販売のハードルが高く断念しましたが、今は息子が加わり、分析や戦略の面で形にできる体制が整ってきました。
10年で売上50億、息子は100億を目指していますが、あくまで農業と正直な商売を大切にしながら進めていきます。
Q.これからの時代に必要とされる農業とはどのようなものだと考えていますか?
現在、加工品の開発にも取り組んでいます。
やはり輸入に頼りすぎないこと。コロナのときに痛感しましたが、国内の生産力を上げることが重要です。
それに、正直に商売をしてきた人しか、これからの時代は生き残れないと私は思っています。
私たちが次世代に残したいのは「正直」「謙虚」「野心」を持って真面目にやること。それが100年続く企業のあり方だと思います。
Q.これから丸やに関わる人たち、野菜を買ってくれるお客さんや取引先、生産者の方々に向けて、メッセージをお願いします。
うちは昔から「正直な商売」を大切にしてきました。それは、いいものはいい、ダメなものはダメとちゃんと伝えるということです。
生産者にも、お客さんにも嘘のないやり取りをすることで、長く続く信頼が生まれると信じています。
来てくれる方には、単に「買う・売る」だけじゃなくて、その奥にある人の顔や思いを感じてもらえたらうれしいです。
丸やの野菜を手に取ってくれることで、少しでも農家の支えになり、地域が元気になる。その循環を一緒に作っていけたらと思っています。

海老原さん、本日は素晴らしいお話をありがとうございました!